アラズヤ商店

日々のナマキズ

人気者になりたい

人気者になりたい。

 

赤裸々すぎてまじで引く。

だからってそれはまったくガチすぎる願いには違いない。

我ながら正直すぎてビビるレベルだ。

だからって、本音には違いないのだから仕方がない。

 

何しろ自分自身の人生を振り返ってみると、いついかなる世代や場面においても"人気を得た"といった自意識のようなものですら獲得した経験がない。ただの一度もない。

だからって勘違いしないで欲しい。

それが狂おしいほど切ない、だとかそんなことを言いたいわけではないのだ。

何なら社会性という品性においてむしろ真っ当な態度のつもりですらいるのだし、適度にへこたれた自意識加減は人生の平穏を憂慮して余りある優良な庶民性と信じて疑いなど微塵もない。

つまり、「まじウゼェ」的なことを面と向かって吐き捨てられた経験など記憶にはないのだし、吐き捨てた経験こそないつもりでいるのだし、危うく吐き捨ててしまいそうになること度々、なりにはまあまあウザめの性分であることくらいは自覚するべき、と努める客観程度は普通に持ち合わせたへこたれ性分であることこそ自覚しているつもりだ。

そんなことこそ無自覚の自意識過剰と言ってしまえばそれもそうかもしれないのだけれど。

 

人気者になりたい、などという考えは馬鹿げているだろうか。

しかしながら考えてみて欲しい。

人気がない、ということは実に悲しいことではないですか。

 

何しろ、人気がないのだ。

書いて字の如く、人の気がない。

一文字隔てただけで響きにさらに絶望感が増した。

何だこの薄ら寒さは。

 

 

まあよい。

とにかく、あたしは商売をしている。

そんなことを前提にして、言っている。

自分で言うのも何だが、事実なのだから仕方がない。

つまり、あたしの商売は人気がない。

単純にツラい。

書いてみたらいよいよその悲しさが強烈に沁みてきてびっくりしてしまう。

危険だ、これは。

気を付けないと命を落としかねない。

 

 

商売を始めてかれこれ14年目に入った。

人間で言うなら中学生だ。

まあまあ、なかなかの年頃だ。

 

14年。

ひと口に言うが、ひと昔どころではない。

干支ひと周りもはみ出してしまうのだから、大したものだ。我ながら。

よく死ななかったものだと本気で思う。

そう思うなりのことはまあまあどころではなくありまくったのだし、何なら今現在もそんな真っ只中と言えなくもない。

今日も無事に、死にたくない。

 

中学生のあたしはまだセックスの仕方も知らない数学ドリルが死ぬほど嫌いなただの地味な中学生だった。

薄暗い魂胆で積極的に宿題をなまけることにご執心で、チャリンコで誰よりも速く走ることしかアタマにない割とバカな方の中学生だった。

何の変哲もないただの中二病罹患者。

言うまでもなく、担任教師には嫌われていた。

同級生には、好かれも嫌われもしなかったつもりでいる。そういうつもりだったというだけで、実際は嫌いな子もいたに違いないが、そんなことの確証を得たがる趣味はない。

たとえバカでも自分のことはかわいいからだ。

 

何となく変わった奴だったせいだ、とは想像するのだけれど、何がどう変わっていたのかは未だによくわからないでいるというか、そもそも積極的に思い出したくもない。

同小から同中の同クラ、という事実だけが魔法という運命だったらしく、ずっと好きだった女の子に突然ラブレターをしたためてしまうような獰猛で身の程知らずなだけの恋心をすでに胸の奥深くに飼い慣らしていた恋愛狂初心者、果てはストーカーへの陰湿進化さえ容易に予感させる電柱の陰気質。

……まさかこんな歳になって思い返すことになるとは思わなかった。

ヤバい、まじで死にそうだ。

あんな自分にはもう二度と出くわしたくない。

死んだって御免だ。

 

例えばそんなことが、今日にまで至るあたしという生きづらさの根本であるのだとしたら、何とも息苦しいことではないか。

ほとんど救いの余地などありそうにないではないか。

まったく余計なことを考えるんじゃなかった。

だからといってどうしたものか、今更ながらこの頼りない胸の内に迸るシンパシー。

我ながら、自分は未だ自分であり続けているということなのか。

救いがない。

 

 

そう、冷静に考えてみれば簡単なことだ。

"人気がない"のではない。

そもそもなかった。

あたしは、そもそも人気がなかった。

何しろ中学生時代以来の、まさに筋金入りの人気のなさだ。

人生はあの日の先にあって、つまり地続き。

覆すことは容易ではない。

かなしいかな、自分の知りたくない自分のことばかり、自分は知っている。

 

14のあたしの先に、商売歴14年目のあたしは立っている。

我ながら絶望的な確認をしてしまった。

気まぐれでも、人気者になりたいなどという安易な吐露にネタを求めるんじゃなかった。

 

相変わらず、今日もあたしの商売は人気がない。

人気がなさすぎて、営業すらしていない。

シンプルな行動原理だ。

 

営業するべき時間に営業せず、奇怪な時間帯に煌々と灯りが灯る。

うお、あかりがあかるともりがともるあかりがともる。

間違いなのかどうかも最早わからない。

ただ、明かりと表記したくなかっただけなのに。

 

人気がないからやってないのだけれど、人気がないからへんな時間にやってるわけではない。

動機は複雑だ。

だからって、勝手な誤解に泳がされるなんて御免だ。

 

 

人気者になりたい。

 

でも、人気者に群がりたがるタイプの人が基本的に信用ならない。

実にけち臭い心理であることは承知の上で言っている。

 

No! SNS‼︎

No! 映え‼︎

 

だからって、人気者になりたい。

けれどなれないあたしを知って、知っても嫌わない人だけの人気者になりたい。

 

ショボい。

我ながら情けないほど。

 

だからって仕方がない。

あたしの本性は、ネットに向かない。

何しろ、色々気持ちが悪いからだ。

 

そんな気持ちの悪さを覆い隠せないリアルを、リアルでやっている。

何しろ、看板が白紙だ。

実に気持ちが悪いではないか。

 

商売なのに、拒絶の気配。

 

それでも嫌いにならないでいてくれる人だけの"人気者"に、あたしはなりたい。